そこにある価値を、解き放つ
2026年7月、RROOMはタイ・バンコクで産声をあげました。
“Stock × Renovation” を実践するサービスの、その始まりのストーリーを、リノベるCEO兼ファウンダー・山下へのインタビューを通じ、皆さまにお届けします。
日本で磨いた価値を、アジアへ
まず初めに、RROOMの生みの親であるリノベるの話をしなければなりません。
リノベるは、2010年に日本・東京で設立。
その後15年をかけて、ストックの流通・利活用を推進するリノベーションプラットフォームを構築、約500社のパートナーと共に、個人、法人、事業者の課題を価値にする様々な事業・サービスを展開してきました。
2018年以降日本でNo.1* の供給数を誇り、2025年には供給実績が累計8,000戸超えました。
『建物の価値は築年数によって決まるのではない。その可能性によって決まるはずだ。』という確信のもと、これまでゼロイチで会社を創ってきました。
順調に事業が成長するなか、転機となったのは2020年のパンデミックです。
属人的だった組織の基盤を整え、信頼し合えるチームを築く必要がありました。
がむしゃらに走り続け、ふと顔を上げた2025年。
新たなチャレンジへ踏み出す土台ができたと感じ、かつて抱いていた『海外で事業をつくる』という想いが再び動き始めました。
なぜ、バンコクなのか
山下は海外へ出向く機会を増やし、アメリカ、ヨーロッパ、アジアと各国を巡るうち、タイで直感の針が振れたと言います。
日本での仕事もそうですが、私は現地で感じた “におい” を大切にしています。何度も訪れてきたバンコクですが、この時はこれまでに感じなかった “マーケットの変化” を肌で感じたんです。
調べてみると、タイは人口がピークアウトし減少傾向。バンコクの不動産マーケットでは新築の供給戸数が減少し、未販売住戸数が積み上がっていました。
これはかつて日本が辿ってきた波形 ––––人口や市場の変化と、よく似通っています。
ここでなら日本で培ってきた実績を活かせるかもしれない。
「リノベるのプラットフォームを輸出する」という新たな決意、そしてワクワク感。
山下は現地で長く不動産業に携わっている方に、その思考を熱く打ち明けます。
そしたら『甘いね。タイでは新しいものが好まれるんだ。築年数が経過した不動産は“シック・ビル(病にかかった建物)”と呼ばれているし、そこにビジネスチャンスなんてないよ』って言われて。
燃えましたね。反対に燃えた。なぜなら日本でリノべるを立ち上げた時も、周りから同じようなことを繰り返し言われたから。
無理だと言われながら信念を貫き、様々なプレイヤーと手を取り合いながら駆け抜けてきた15年間。
今の日本では、リノベーションが住まいの選択肢として一般に普及するようになりました。
程なくして2025年3月、隣国ミャンマーで大規模地震が発生。
バンコクでも建設中の高層ビルが崩落し、ショッキングな映像が全世界で放送されました。
地震の4日後、私と山崎(現・RENOVERU (THAILAND) CEO)はタイ現地へ飛びました。
全部で16棟ほどコンドミニアムを視察するうち、次第に古い建物ほど大きなクラックが入っていないことに気が付いたんです。
それは一体なぜなのか。
日本と同じように、古い建物ほど強固な地盤の上を選んで建てられているからか。
市場の急成長により、新しい建物の中には施工に不行き届きなものがあるからか。
答えはまだ分かりません。
でももしこの仮説が正しいのだとすれば、日本で培った知見が、この街で役に立つかもしれないと思ったんです。
山下が可能性を感じたのは、何もバンコクの不動産マーケットだけではありません。
この地に根付いたデザイン感度の高さに魅了されたのです。
“Next BROOKLYN”と呼ばれる地区では、若いスタッフが洗練されたコーヒーショップでイキイキと働き、訪れる人もそこで過ごす時間に喜んで投資しているように見えました。
元々芸術文化が醸成されているので、国全体で色使いのセンスも素晴らしい。
日本のリノベーション黎明期に感度の高い方が次々自宅をリノベーションしていったように、バンコクでも同じ未来を描けるのではないかと思いました。
この街が持つマーケットとしての可能性と、文化的な魅力。
その両方が重なったとき、挑戦する場所はバンコクしかないと決意を固めました。
山下はアジア拠点のハブとしてシンガポール法人を設立。
日本で描いてきた道筋と同じように、自らが先頭に立ち、日本とアジアを行き来しながらチームを立ち上げます。
扱うものが不動産である以上、現地にローカライズすることが大切です。
ゼロイチのフェーズでは瞬時に判断しなければいけない場面が続きますし、変えてはいけない部分を守り抜く意思も必要です。
だからこそ、シンガポール法人に次いで、RROOMのオペレーションを担うRENOVERU (THAILAND)も立ち上げました。
リノベるが唱え続けてきた「かしこく素敵な暮らし」の概念を持ち込めば、バンコクの未来をより豊かにできるのではないか――そう確信したからこそ、しっかりと腰を据えて、自ら向き合っていきたいと語ります。
課題を価値に
バンコクでの事業をスタートさせるにあたり、マーケットリサーチを開始。
まず見えてきたのは、新築物件が高騰し狭小化するなか、好立地でゆとりある中古物件には大きな潜在価値があるということ。
しかし同時に、「評価の物差し」がまだしっかりと整備されていないことも明らかになりました。
不動産流通そのものに明確なルールが設けられておらず、リノベーションしようにもコンドミニアムの竣工図が手に入らない。
きちんとした評価基準が存在しなければ、買い手は安心して住まいを選べず、売り手もその価値を伝える術がありません。
そこで、一つひとつの物件と向き合いながら「評価の物差し」をつくっていけるよう、RROOMを立ち上げることにしたんです。
RROOMは、単にリノベーション済みの物件を販売するサービスではありません。物件に眠る価値を見極め、再編集して磨き上げ、次の誰かへと受け継いでいく仕組みそのものです。
「物差し」は、少しでも歪んでいると、その先のすべてがブレてしまいます。
だからこそ、揺るぎない、精巧な「物差し」が必要なんです。
すべてのプロジェクトに誠実に向き合い、研究を重ねることで「評価の物差し」を研ぎ澄ませていく。
もちろん日本との違いに戸惑うこともありますが、事業の立ち上げに不測の事態が生じるのは当然のこと。
何かに躓けば、その都度徹底して調べ、解決していけばいいんです。
起きたことのすべては物件の履歴となり、将来安心して再流通させるための判断材料になります。
そうして質の高い物件が循環する社会を創り出していきたいですね。
山下が日本で言い続けてきた「課題を価値に」が、まさにこの都市でも展開されようとしています。
RROOMの、その先に
RROOMでは、長期にわたり価値を持ちうる資産を選び抜き、その可能性を引き出すリノベーションを施し、日本品質の検査・記録・認定を経た物件を順次公開していきます。
ほんの少しの手直しで十分であれば、そのトリガーを引き当て、昇華させます。
大規模なリノベーションが必要であれば、そこにかかる手間暇は惜しみません。
たくさんの知見が集まった後には、バンコクの不動産マーケットが抱える様々な課題にも対峙していきたいですね。
公正な不動産情報の集約、仲介事業の整備、セカンダリーマーケットの創出など。
前に進めば進むほど、見える景色は変化し、課題も具体化するはずです。
これまで実践してきたことを信じ、しっかりとローカライズしながら、パートナーの皆さまとともに進んでいきたいと思います。
まずは一つひとつ、丁寧に。
バンコクに眠れる価値を見出し、確かな形へと証明していきます。
歩んで行ったその先に、豊かな都市の未来があると信じて。
次回のJOURNALでは、RROOMの第一号物件「Umbra」が建つアソーク地区の魅力、また物件が持つポテンシャルに迫ります。どうぞお楽しみに。