見えない価値を、形にする
まもなく完工を迎えようとしているRROOMの第一号物件「UMBRA」。今回は可能性を秘めた築30年のコンドミニアムの一室が、どのようにその価値を再発見され、新たな形を与えられようとしているのか。リノベるでプロジェクトに関わる4名にインタビューし、その思考とプロセスに迫ります。
秘めたる価値を再定義する
まずはRENOVERU(THAILAND)のCEOを務める山﨑真一に話を聞きます。リノベる側から見たこの物件の “素の魅力” はどのようなものだったのでしょうか。
山﨑:第一号物件を決めるまでに数十件のコンドミニアムを視察した中で、Asoke交差点間近という圧倒的な立地と、この部屋から見える景観に魅了されました。これらふたつの特徴を掛け合わせた物件とはそう出会えない ——そう確信したことが、ここに決めた理由です。
▲ 中央が「UMBRA」施工中のLas Colinas。表はAsoke Montri通りに面し、裏には低層の街並みが広がっている。
山﨑:またポテンシャルを秘めているにも関わらず、築30年が経過したことで内装は古び、その価値がきちんと評価されていない気がしました。リノベーションすることで、いまの時代に合わせて価値を再定義できるのではないかと感じたんです。
▲ 既存の内装。各空間を分断するように壁が立てられていた。
その考えは前回のJOURNALでインタビューしたMASUYA ASSET PARTNERS ASIA Pte. Ltd. 物件担当の大本さんと一致しています。ではどのようなターゲットを思い描いたのでしょうか?
山﨑:外国人で生活にゆとりのある方、もしくはタイの若い富裕層の方です。ご実家から独立され、利便性の高いエリアで快適な住まいをお探しの方など。ここは少し移動すれば一流のレストランや世界的ブランドを扱うデパートに手軽にアクセスできる立地です。新しい世代の、新しい生き方に寄り添う住まいをつくりたいと思いました。
価値を最大化する間取り
元の間取りは2LDK+メイドルーム。タイの平米数が広いコンドミニアムらしく、ふたつの寝室にはそれぞれバスルームがついており、メイドルームにもコンパクトな水まわりが。トイレは合計4つありました。
▲ 既存図面を描き起こしたもの。
ここからは当時株式会社ブルースタジオのメンバーとしてデザイン監修を手掛け、RROOMの構想段階から関わる石井健(現 RENOVERU GLOBAL / RENOVERU(THAILAND))にバトンを渡し、間取りの考え方について話を聞きました。
石井:メイドルームは必要なのか、2LDKにするのか3LDKにするのかなど、様々な検討を行いました。結果、売主であるMASUYAさんからの希望もあり、3LDKで進めることになったんです。
▲ 既存の内装がすべて撤去されたスケルトンの状態。
石井:この物件最大の魅力である眺望を活かすため、LDKにいながらふたつの窓とバルコニーを見渡せるよう、LDKに隣接するマスターベッドルームには室内窓を採用。西側は目前にTerminal21がそびえ、南側はAsoke駅や高層ビル越しにベンジャキティ公園が見える。まるでバンコクを詰め込んだような、特別な景色を日常に取り込んでいただけます。
▲ 施工中の様子。LDKと主寝室の間に大きな開口部を設けた。
二方向に視線が抜けることにより、より開放感を感じる間取りへ変更。また設計のコンセプトでは、絶対に外したくないポイントがあったと言います。
石井:166㎡という広さは、近年の新築コンドミニアムでは得難い大きな価値です。『とにかく広い』という体感を大切に検討を重ねていきました。
タイでは自ら料理する方は少ないと言われますが、山﨑CEOの言葉にもある通り “新しい世代の新しい生き方” を実現するため、LDKの主役として大きなアイランドキッチンを採用しています。回遊性を持たせることで、生活の動線も整理しました。
▲ 左・組み立て前のキッチン。床を一段上げ、両側に動線を設け、舞台のような設えになる予定。/右・LDの床には大判の石タイル、キッチンの床にはパーケット柄のタイルを採用した。
石井:また3つの個室は用途を制限していません。主寝室+子ども部屋2つ、寝室2つ+仕事部屋、寝室1つ+書斎+倉庫など、様々な家族構成や暮らし方に対応した臨機応変な間取りです。
RROOMの第一号物件だからこそ、家族構成や使い方を決めつけず、たくさんの方にご検討いただけるよう柔軟性を持たせたと話します。
明らかになるギャップ
大まかなプランが決定し、いよいよここから工事がスタート。しかし程なくして “日本とタイの違い” を実感することがいくつか起こります。プロジェクトマネジメントを担当する木村有佑と、施工管理のアドバイザーとして入る宮本真梨華に話を聞きました。
木村:日本では管理組合や管理会社が竣工図面を保管していることがほとんどですが、それが手に入らなかったことが最初の障壁でした。
細かな寸法を把握しないまま工事を進めると後から不都合が生じる可能性が高いため、入手できた簡易的な図面を基に室内をすべて測量し直したと言います。また同時に、日本ではマンションごとに存在する管理規約の内装規定がなかったため、事前に制約を把握することも困難でした。
▲ 既存内装解体時。壁の立て方や配管のルートなど、想定とは異なる点をひとつひとつ確認していく。
リノベーションの実施図面をジュリスティック(管理組合)へ提出すると無事に許可が下りたものの、着工後に「やはり水まわりの位置は変更しないでほしい」「スプリンクラーの位置を移動してほしい」などの要望があがりました。
木村:変更依頼をきっかけに間取りをブラッシュアップしたため幸いにして良い結果へ導けましたが、設計の練り直しにより工期に影響が出たのは事実ですね。
▲ 現地で打ち合わせを行う木村。この時は排気のルートを確認している。
施工現場に度々足を運んでいる宮本も、現地の職人さんの働き方に違いを感じたと言います。
宮本:日本では工程表を作成し、そのスケジュール通りに進めていくことが一般的ですが、タイでは職人さんの稼働日にバラつきがあり、進捗が読みにくいところがあります。現在は定期的にミーティングを行い、遅れが生じないようコミュニケーションを取るようにしています。
▲ 工事現場をきれいに保つことも、安全上や作業効率上とても重要。掃除されたスケルトン状態の室内はすっきりと見違える様相に。
監修の立場から、石井もこう補足します。
石井:床の遮音規定、排気のルート、外壁やサッシに関わる工事範囲など、法律や管理組合のルールも日本とは異なる点が多い。日本では主流のフローリングも湿気の多いタイでは傷んでしまう懸念があるため、タイルや樹脂製のシートを使うなど、ローカル事情に寄り添うことを大切にしました。
得た知見を蓄積し、次へ活かす
そんな「UMBRA」の工事も、いよいよ終盤。RROOMのビジネスモデルを構想し、この物件のデザイン監修も務めた石井はこう話します。
石井:プロジェクトを進めるごとにぶつかった様々な課題こそが、我々がいま最も重要視する “財産” です。日本でリノベーションが広がり始めた25年ほど前も、建築とリフォーム業界の間には乖離があり、ことリノベーションにおいては制度や保証も整備されていませんでした。そこでリノベーションに関わるたくさんの事業者と手を取り合い、2009年に一般社団法人リノベーション協議会を発足し、皆にとって分かりやすい流通の仕組みを作っていったのです。
▲ コンクリートの躯体に墨で間取りを描き、その上に壁を立てる。少しずつ物件の骨格が見えてきた。
石井:まずは現場で “リアル” を知るところから。私たちが「UMBRA」で得た知見を次の機会へと活かし、高品質の住宅を提供し続けること。その先に、バンコクの中古市場をよりエキサイティングなものにできるよう、努力していきたいと思っています。
ゼロ地点として選んだLas Colinasの一室が、まもなく「UMBRA」として完成を迎えます。次回は完成した室内の写真と共に、そのこだわりを細部にわたってご紹介します。どうぞお楽しみに。
Contact
ご相談・お問い合わせ
RROOM物件のご検討、リノベーション、住まい選び、新しい暮らしの可能性について。まずは、お話ししませんか。